2013年2月14日木曜日

認知症の鑑別診断②

前回からのつづきです。



血管性認知症VD 20-30%

○経過
 階段状と表現される。つまり突然悪くなることがある不可逆的。

○症状
 ★皮質下認知症(「認知症の鑑別診断」 参照)の症状がある

 ・ADと比べると、物忘れに対する自覚が保たれている
 時間をかけたりヒントを出すと思いだす(想起の障害)
 ・感情のコントロールがつかない、感情失禁など喜怒哀楽が激しい強制泣き・笑いがみられる
 ・昼夜のリズムが乱れやすい、そのためせん妄になりやすい
 ・反応に時間がかかる、economy of speech  ・早期からの歩行障害、易転倒性
 

○画像
 MRIで白質病変が目立つ
  ・多発梗塞型

  ・Binswanger型: 認知症、歩行障害、尿失禁
   鑑別診断は CADASIL, 正常圧水頭症




びまん性レヴィー小体型認知症;DLB 10-20%

○症状
 レヴィー小体が 皮質と脳幹に広がるため、皮質と脳幹の両方が障害された症状がでる
   AD+Parkinson病のような症状を呈する  ●以下の症状のうち★がついている3症状のうち、2症状を満たせばDLBと診断する

 ・発症初期からの幻視がある。ADとは対照的である。
  ※幻視をみたらせん妄との鑑別をする

   幻視の内容を覚えてなければせん妄、覚えていればDLBの可能性が高い  視空間認知障害がある
  ADと同じで Clock drawing test; CDTで時計の形が崩れやすい
 動揺する経過と症状、特に日内変動があ 

  診る人によって症状が異なって見える

 ・抗精神病薬に感度が高く、症状が増悪する
 睡眠障害は頻発する
 レム睡眠行動障害は特異的 
 ・自動運動障害
 ・見当識障害、言語障害
 ・無気力、いらいら、抑うつがあるaggitationも頻発
 Parkinsonismは診断に必須

  
  DLBの多くの症例では、Parkinson症状が認知症状発症後、1年以内に生じる。parkinson with dementia;PDD ではParkinson症状が認知症症状に何年も先行する。という研究から、Parkinson症状が認知症状発症後1年以内に生じた場合、DLBと診断するという "1 year rule" が決められたしかし、現在では根拠が乏しいとされ、Parkinson病, PDD, DLBの3疾患は一つの病態であるとして、Lewy body関連疾患まとめられている

○画像
 ・MRI上は特異的な所見なし

  ADのような画像を呈することもしばしば

 ・SPECT, PETの所見はADに似ている

  全体的な低下または後頭葉の低下があればDLBらしい
  ※SPECT後頭葉の取り込み低下所見は、あくまDLBADを比較したときの所見
   DLB診断に際して、後頭葉血流低下は必須ではない

 ・MIBGがADとの区別に有用である
  MIBG 後期取り込み相低下はDLB96% に見られる
  Wash out rate  23.6% をカットオフとすると感度87%、特異度83%でDLBが診断可能


○治療
 ・抗コリンエステラーゼ阻害薬は効果がある(保険適応外) 
  アリセプト少量で使用する




前頭頭変性症 FTLD

 様々な疾患をひとくくりにした名称であ 以下のように分類される

 前頭側頭型認知症;FTD (前頭葉変性型、Pick型、運動ニューロン型)
 primary progessive aphasia
 semantic dementia意味性認知症

 FTDが最多である
 以下はFTDについて述べる

○経過
 発症は65歳以下が主だが、発症・進行は緩徐でとらえにくい。

○症状
 ●行動の異常が他の認知症に比べて目立つ
  質疑応答の内容よりも診察時の様子が診断に重要である
 ●皮質下症状は目立たないが、前頭葉機能障害が目立つ


 ★前頭葉機能障害
  ・明らかな人格の崩壊

  ・感情コントロールの障害愉快さ、無表情など)
  ・他人の感情が理解できない環境に関係なく行動しようとするgoing-my-way)
  ・社会適応の低下(不適切な言葉遣い、性的行動を見せつける)

  ・無関心
  ・無計画性・判断力の喪失
  ・注意障害
 
  ・脱抑制 →衝動性・過食・放浪
  同じ言葉・フレーズの反復 常同言語反響言語(オウム返し))
  ・考え無精(考えてもすぐにやめる
   ※ 皮質下認知症では 思考の速度が遅い、施行緩慢
  ・座ったかと思うとすぐに立ち上がる「立ち去り行動」

  ・抽象化概念の障害
  ・浅層失読(海豚→「ウミブタ」)

 その他の症状
 万引き、常同的で強迫的な徘徊 

 進行期にParkinson症状を伴うが転倒は稀 
  ※ 皮質下認知症ではParkinson症状を伴うため、転倒しやすい 


○画像
 ・MRI 前頭側頭葉に局在をもつ強い萎縮がみられ左右差が大き 
  ADと比べて側頭葉萎縮の左右差が顕著であれば、90%以上でFTDであ
 ・SPECT 前頭葉皮質の血流低下はADやDLBに比べて広範囲である

○鑑別
 ・ADと比べて記憶は良好に保たれ 
 ・発症年齢がADに比べて若い。その場合若年性ADとの比較が必要になる



つづきます。
 


参考文献

 福井俊哉 『症例から学ぶ 戦略的認知症診断』 第2版
 A. Stern "HANDBOOK OF GENERAL HOSPITAL PSYCHIATRY" 6th edition
 青木茂樹 『よくわかる脳MRI』 第3版


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