2013年2月11日月曜日

ナラティブ、プラセボ、共感

 いくつかの研究が重要な同様の事実を示しているように、私には思われる。

ナラティブ・ベイスド・メディスンNarrative based medicine; NBM

NBMは患者の病いの語りを重視する。NBMは慢性の病いを患う患者から見た病いの経験が、疾患を治療するという思想の生物学的医学の切り口からは見落と されてきたことに警鐘を鳴らす。慢性の病いを患う患者は、生物学的医学からすれば、薬などで対処できない不定愁訴をまき散らす迷惑な患者でしかない。しか し治療者の望ましいケアによって、患者自身が病いにうまく対処できるようになる。



プラセボ効果

プラセボ効果を研究することは、何がその効果に寄与しているかについて重要な示唆を含む。

 プラセボでうつ病が改善したことは、プラセボがうつ病に効いた、という意味でも、うつ病が自力で自然に治ったという意味でもない。計画的に受診してもら い、評価尺度で評価し、錠剤を処方し、服用アドヒアランスをチェックされる、これを8週間、毎週繰り返すことは、それだけで治療的である。『方法としての動機づけ面接』(原井2012, 改変)

 つまり薬物以外の何らかの因子が患者の疾病を改善させることが、科学的な方法によって証明されている。それは、例えばプラセボ対照試験で行われる定期的かつ細やかな症状のチェックと、それを含む一連の患者ー治験管理者関係である。


精神療法

精神療法にはいくつかの技法がある。しかし、技法によらずある一定の治療効果が得られ、その割合は85%であるという報告がある。即ち、いかなる精神 療法を用いようとも、その影響は効果の15%程度にしかならず、効果が大きく変わることはない。いずれの精神療法でも見られる患者ー治療者間の関係が、精 神療法の効果に寄与しているのである。


動機づけ面接

いくつかの疾患で科学的に最も優れた効果が示された面接法の一つに動機づけ面接Motivation Interviewing; MIがある。MIの重要な点は、治療者による患者への共感から生じる、患 者自身による変化への意思と行動の変化である。このために患者は自身の抱える問題行動を自分の価値観に従って修正することができる。


 つまりは、患者とその周囲を取り巻く人間との望ましい関係によって、病いを患う患者は、自身で病いを癒したり、それに伴う問題にうまく対処できるように なるのである。その望ましい関係の本質は明らかにされていないが、少なくとも一つは、患者と治療者の共感であることはおそらく正しい。


参考文献
 アーサー・クラインマン 『病いの語り』
 原井宏明 『方法としての動機づけ面接法』
 堀越勝 『精神療法の基本: 支持から認知行動療法まで』

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